わたしと専務のナイショの話
『そ、そういえば』
とのぞみが口を開く。

『私、昨日、車置いて帰った気がするのに、朝、車があったんですよね。

 頭痛くて、ぼんやりしていたので、よくわからなかったんですが。

 何処からが夢だったんですかね?

 昨日、専務に出会ったところからでしょうか』
と無茶を言う。

 そのうち、自分と再会した辺りから夢なんじゃないかとか言い出しかねないのぞみに、京平は、
「何処からも夢じゃないぞ」
と言った。

「お前は車を置いて帰った。
 翌日、迎えに行くのにちょうどいいと思っていたのに、うちの母親が変な気を利かせて、お前の車を取りに行かせて、運ばせたんだ」

『はあ。
 そういえば、小人さんが磨いてくれたみたいに、車の中まで、ピカピカになっていました』

 あの母親。
 気を利かせているつもりで、息子のチャンスをつぶしている……と京平は思っていた。

「送っていった俺がお父さんたちに歓待され、ぜひ、今度一緒に酒でもと誘われたのも知らないんだろう」

『はあ、すみません』
と言ったのぞみが、そこで小さく欠伸をする。
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