わたしと専務のナイショの話
「なにかってなんですか?」

「なんでもいいから歌え」
と言われたので、視界に入った自分の靴を見ながら歌ってみた。

「赤い靴~♪」

 暗い廊下にブルーになりそうな短調の曲が低く響く。

 なにかの呪いが始まりそうだ、と思ったのだが、一度歌い出したものは止められない。

「履~いてた~、お、ん、な、の、子~♪」

「今すぐその口閉じないと、張っ倒すぞ、このチョコで」

 いや……御堂さんが歌えって言ったんですよね、と思っているうちに、専務室の前に着いていた。






< 246 / 472 >

この作品をシェア

pagetop