わたしと専務のナイショの話
 細い銀縁の眼鏡が似合う、すっと通った高い鼻梁。

 なにより、無駄に整ったこの顔は――。

「あっ、せんっ……」
と叫びかけたのだが、いきなり飛んできた消しゴムが額に当たり、のけぞったのぞみは後ろのドアに後頭部を打ちつけた。

「坂下っ」
と祐人が振り返る。

 のぞみは痛む額と後頭部を押さえながら、大きな窓の前のデスクに偉そうに座る男を見た。

 遠方から見事、額の中央を撃ち抜くこの技っ、間違いないっ。

 専務室に居たのは、高校のときの担任、槙京平(まき きょうへい)だった。

 京平はのぞみを見て言う。

「御堂、チェンジだ」

「専務、此処、キャバクラじゃありません」

 冷静に祐人が答えていた。




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