わたしと専務のナイショの話
 


 木曜日。

 のぞみは京平たちが学生時代通っていたというレストランに行った。

 こんな高価そうな店に、学生のくせに通っていやがったか、と思うのぞみの前には、落ち着いた感じの女性が居た。

 美人っ。

 大人っ。

 そして、すごく綺麗な人だっ。

 のぞみは固まる。

 こ、これが早苗さんか。

 この人にとても勝てるとは思えないが……となんの勝負も挑まれていないのに思う。

 早苗は、のぞみを見て、にこりと微笑んできた。

「初めまして。
 横田早苗です」

 すごいっ。
 余裕たっぷりの大人の笑みだっ、と思いながら、のぞみは、ぺこりと頭を下げた。

「は、初めましてっ。
 坂下のぞみです」

 うーむ。
 我ながら、余裕の欠片もないな……と思ったとき、早苗が京平に微笑みかけ、

「ウワサ以上に綺麗な方ね、のぞみさん」
と言ってくれたのだが、京平は、これがか? という顔をしていた。
< 402 / 472 >

この作品をシェア

pagetop