わたしと専務のナイショの話
 



 じーっと早苗を窺っているのぞみを見ながら、京平は、

 ふふふ。
 しめしめ、と思っていた。

 ヤキモチを焼いてるな、のぞみめ。

 ナイスだ、早苗。

 なんで、さっきから、こっちを見てるのか知らんが……。

 京平がそう思ったとき、のぞみが、
「早苗さんっ」
といきなり、話をぶった切って、早苗に呼びかけた。

 どうした、のぞみ。

 まさか、早苗に俺をめぐって、喧嘩をふっかけようとか?
と京平は思ったのだが、のぞみは樫山の方を見ながら、言い出した。

「早苗さんっ。
 樫山さんはいい人ですっ。

 幸せにしてあげてくださいっ」

 そっちかっ。

 そういえば、さっきから、こっちばかり見ている早苗を、樫山が心配そうに見ていたな、と気づく。
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