わたしと専務のナイショの話
 



「びっくりしたぞ。
 一瞬のうちに無礼を働いたのかと」

 社食の窓際の席で、ラーメンを前に祐人が言ってくる。

「どんな凄腕のドジなんですか、私……」

 祐人がふった胡椒にむせながら、のぞみは言う。

 社食は役員室の二階下にあり、大きな窓から下がよく見える。

 いい眺めなんだが、ぞわぞわっと来るんだよな~、私、とのぞみはチラと下を見て、すぐに目線をそらした。

 祐人はラーメンを食べながら、上目遣いにこちらを窺い、訊いてくる。

「お前が専務と知り合いだったとはな。
 どんな知り合いだ」

「……そ、それは言えません。
 言ったら、殺されることが先程判明しましたので」
と豚骨ラーメンを前に、のぞみは言った。

 社食のものとしては、なかなか濃厚そうなラーメンを見ながら、祐人が言ってくる。

「いいのか、女子。
 見るからに高そうな、その新品のスーツに汁が飛ぶぞ」
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