わたしと専務のナイショの話
「いえ、私だって、小洒落たランチメニューにしようと思ってたんですよ。
 目にも鮮やかなサラダや焼きたてパンとかが並んだ」

 横のテーブルには、まさにそういうメニューを食べている女子社員たちが居た。

「でも、目の前で、御堂さんがラーメン頼むから。
 ラーメンって見たら食べたくなるじゃないですか」

 テレビで見ても、すぐ財布をつかんで出て行きそうになるのに、匂いつきで目の前に置かれては、ラーメンの魔力に逆らえるばすもない。

「俺のせいか……。
 っていうか、俺は醤油だからな」

 何故、更に濃厚なものを、という目で祐人が見る。

 いやいや、今だって、この匂いにつられて、ラーメン食べたくなっている人が居るに違いないですよ、と思いながら、のぞみは視線を巡らせた。

 すると、新人の世話役らしい女の先輩と座って食べていた同期の中径鹿子(なかみち かのこ)と目が合った。

 なにあんた、イケメンと食べてんのーっ、という顔でこちらを見ている。
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