世界で一番優しい嘘〜短編集〜
僕と海に、そう書きかけて、そのまま日記は終わっていた。
「わた、し・・・
あの子になにもなにもして・・・あげられなかったのに・・・わたし・・・」
「そんなことないよ。
あの子はお前がいるだけでもう十分、十分、幸せだったんだよ」
「あっ・・・あっあっぅあ・・・っ
私が代わりに・・・死ねば・・・あの子は・・・もっと愛をしれた・・・幸せに・・・」
幸せになって欲しかった。
「僕達はあのこの分まで生きよう、シャーロット」
「嫌よ!
あの子のいない世界なんて不幸そのものだわ・・・っああああぅ・・・っ」
泣き崩れたその時だった。
・・・ビュオオオッ・・・・・・
6月には珍しい、大きな風がふいた。
「え・・・?」
私もイアンも立ち尽くした。
『風を吹かせます。
それが最後のお別れです』
日記をおもいだす。
あの子が、お別れに来たーーー
私たちは確かにそう受け取った。
その時、声が聞こえた。
『不幸とは幸せに気づけない人のことを言うんだよってミリヤが教えてくれてんだよ』
・・・!
あの子の、あの子の優しくも細い声が聴こえた。
確かにーーー聴こえた。
気づけば、そこには、海の音と、私たちだけが世界に取り残されていた。
*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~
『不幸とは幸せに気づけない人のことを言うのよ』
end