世界で一番優しい嘘〜短編集〜
「・・・目が覚めた?」
僕が目を開けると、目の前には金髪碧眼の女性が僕が横たわるベッドに腰をかけていた。
・・・ミリヤだ。
「みり、や・・・」
「そうよ」
そうだ、僕はピクニックの予定を壊してしまった。
ミリヤも結構ノリノリだったのに。
この人の楽しみを奪ってしまった。
そう思うと、少し胸が痛む。
「ミリヤ・・・ごめんなさ」
僕が言いかけると、ミリヤは、
「ねぇ、海に行きましょうか」
ーーー?
海・・・?
「あなた、海に行ったこと、ある?
・・・ないでしょう」
「・・・無いよ」
「ふふ、私ね、1度見かけた事があるのよ。
入ったことはないのだけど、冷たいみたいね。
行ってみたくない?」
・・・海・・・。
僕の母、葵が好きだった海?
「ミリヤは海が好きなの?」
「どうかしらね」
ミリヤは少し考える素振りをした。
「青、くて、時々、光る。
それが海。
って、シャルロットが言ってたわね」
シャルロットとはミリヤの姉である。
姉、シャルロットと妹ミリヤ(本名、シャーロット)は一卵性の双子。
ちなみに、ミリヤはミドルネームである。
「僕も行きたい」
「そうでしょう?
光る海を見たいわよね?ミリヤもそう思っていたところなの。
姉様が言ってたのよ、海は少し悲しくて、心が洗われる、と。
そうと決まったら、あなた、ちゃんと日記持ってくのよ?」
「・・・うん」
日記というのは僕が毎日書いているもの。
外に出ることもままならなかった、12の時からずっと日記をつけている。
日記を書いたら、毎日明日は何するか、を考えるのよ、それが明日生きる意味に繋がるでしょう、そうミリヤが言っていたから。
「ねぇ、世界は愛で包まれているから、貴方もいつかは、人を愛し、愛され、私から旅立っていくのよ。
人に愛され、人は初めて生きる意味を知る。
そうでしょう?
愛されなかったら、悲しいもの。
ミリヤが貴方を愛したように、貴方もいずれ、誰かを愛す。」
ミリヤは時々、とても考えされられる事を言う。
僕には難しい事ばかりだ。
「でも僕は両親に、葵に愛されなかった。
生まれても、祝福されなかった」
「必ずしも、子は親に愛されなくてはいけない?
貴方は葵が良かった?ミリヤでは、駄目だったかしら」
「・・・そうじゃないけど・・・僕は」
「生まれてきてくれてありがとう」
僕はハッとして彼女を見上げた。
「私は色が生まれつき、分からないけれど自分を不幸と思ったことは無いわ。
むしろそのおかけでイアンに出会えたのかもしれないものね。」
「僕も、そう思える日が来る?」
もちろん、とミリヤはやっぱり優しく微笑んだ。
けど僕はいつも自分が不幸だとおもってしまうから。
なぜ僕がーーーと思ってしまうから。
「いつも言ってるでしょう?
不幸とは、幸せに気づけない人のことを言うのよ」