気まぐれ悪魔に魅せられて
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引き止めることはできた。
ただ、引き止めて何になる?俺は俺の気持ちを把握していないのに、そんなことしたってむしろ気持ちを逆なでするだけだろう。
「変だよ、か」
俺を置いて歩き出した香緒ちゃんはいつの間にか知らない女の子みたいで。
純粋に、あんな子がマネージャーなんて放って置かれないだろうな、危ないよな、なんてどこか他人事に考えながら来た道を引き返す。
向かう先なんかない、ないけどただひたすらに歩いて消化していきたい。
すっかりもろくなってしまった俺等の関係だって行き先が全く見えないのだから。
***
俺が2人に出会ったのは、小学校3年の時。
クラスが一緒になった叶斗と遊ぶようになって、しばらくして香緒ちゃんとも遊ぶようになった
。2人は物心つく前から一緒だったから、なんとなく香緒ちゃんは叶斗のものって認識が俺の中にずっとあった。
多分、俺だけじゃない。
香緒ちゃんにとってもまた、絶対的なお兄ちゃんは叶斗で、俺は叶斗の友達って認識だったと思う。
それが崩れ始めたのが香緒ちゃんが中学2年で俺らが高1の頃。
その頃叶斗は部活が忙しくて、反面俺は高校では部活をやってなくて。
週末、香緒ちゃんはよく俺といるようになっていた。
「叶にいがいないとつまんないね」
そう言いながら、だけどその分夜ご飯の時間までを楽しみに待っている香緒ちゃんのあどけない笑顔に。
颯人くんも食べて行ってね、そう言ってはくれるけれどやっぱり物心ついた頃からお互いの家で育ってる2人と、親も含めて一緒にいるのはなんとなく居心地が悪くて、結局遠慮して帰ってしまう自分に。
どことなく1人勝手に深めていく疎外感が不快で、それを振り払うように香緒ちゃんをいろんなところに連れ出した。