気まぐれ悪魔に魅せられて
「笠原香緒です、よろしくお願いします」
新入生は面倒くさい。なぜかって、オリエンテーション三昧なこと。成績をどう付けていくとか、文理選択とか。そんなことを実際に授業が始まる前に言われても何のリアリティーもない上に、果ては夢を持つことの重要さとか言われても大変困る。夢?目標の間違いではなく?さっさと日常に戻って欲しい、だってテンプレ自己紹介にも飽きてきたから。
「笠原さんも一緒にご飯食べよう?」だけど、そんな退屈さは顔に出してはいけない。メンドくさい〜そう言う時は声を高くして、オリエンテーションはつまらないけど、みんなとの生活には期待しています、そんな雰囲気を出しながらじゃないと許されない気がする。
「香緒でいいよ?」またも自己紹介地獄に、しかも今度は違うテンプレ付きで。無難に、慎重にスタートを切っていく。手探りでいろんな事が進んでいくこの時期は、一つのミスも許されないような気がして疲れるけれど、高校生という称号をようやく身につけられた気分で少しだけ充実感もある。高校生になったら、もう無条件で妹という認識じゃなくなるって根拠のない期待をしていたから。