気まぐれ悪魔に魅せられて
お兄ちゃん?幼なじみ?
「行ってきます!…あれ?」
慌ただしく家を出ると見慣れない姿が飛び込んできた。
「香緒ちゃん、おはよう」
「颯人くんなんで?どうしたの?」
颯人くん、叶にい、私。
みんな家は近いけれど一緒に学校に行くわけではないから、いつぶりかも定かではない光景に素直に驚く。だけどそれに答えることなく歩き始めてしまった颯人くんを慌てて追いかけると、少し違和感があって。
叶にいと違って、颯人くんはわかりやすく優しい人だ。小学生の頃から知っているけれど、ケンカとかは一度もしたことがない。私と叶にいが割と好き勝手派だったから、常に仲介役に回ってくれていて、だから多分私とだけではなく、叶にいともケンカとかはしたことがないのではないのだろうか。
だから、そんな彼が私の質問に答えず歩調も合わせず、なんてそんなこと初めてだから、繰り返し聞くのが少しためらわれて、黙って隣を歩くことにした。
だけど、
「香緒ちゃん部活は決めてる?」
しばらく歩けば、急に話を振られて。
あー…だけど、なんで迎えに来てたのかは結局言わない感じ?
その小さな違和感が少し寂しくて、無意味な嘘をついた。
「決めてるよ」
「野球部の、マネージャーやりたいなって思ってる」