彼の隣で乾杯を

おかえり



早希から連絡がきたのはその日の深夜だった。
副社長と再会してキチンと向き合ってみることにしたそうだ。

しかし、早希からかかってきた電話の内容には仰天した。
高橋から会社のエントランスで拉致された話は聞いていたけど、副社長が再会した日に婚姻届けを持って実家にあいさつに来たというのだから。

本当になんて男だろう。
でも、そこまで大事な女なら最初から離さなければいいものを。
呆れるやら感心するやら。
でも、まあ早希がそんなオトコでも好きだというのなら仕方ない、私も賛成してあげないわけにはいかない。

「由衣子、今まで心配かけてホントにごめん。副社長のことも黙っててごめん。言いたかったけど、あまりにいろいろダメージが大きすぎて由衣子相手でも口に出すことができなかったの」

言いにくかった早希の気持ちもわかる。
学生時代から付き合っていた早希の元カレは結婚間近と思われていた早希を棄ててよりにもよって後輩とデキ婚することになったと一方的に別れを告げるようなクソ野郎だった。

その男と別れてすぐに知り合ったのがどうやらうちの副社長で。
その副社長との間にもまた女性問題が・・・となればそりゃあショックが大きかっただろうし私にも言い出しにくかっただろう。

「早希が副社長を信じられるのなら応援するから」

「私ね、ずっと彼に会いたかったんだよね。この半年間もずっと忘れられなくて。自分の気持ちに素直になったら彼のこと信じたくなって」

「・・・よかったね。これからは逃げないで立ち向かいなさいよ」

「うん。そうする。由衣子、ありがとう」

親友の落ち着いた声に大きく安堵した。

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