彼の隣で乾杯を
そうでもしないと本当に大丈夫じゃなくなってしまう。
本心を言えば高橋に鬱陶しい女だと思われてしまうのが怖い。

なかなか泣き止むことができずにぐずぐずと泣いていると玄関のチャイムが鳴った。
こんな真夜中に。

驚きビクリと身体が震えるけれど、もしかしたら早希かもしれない。

慌てて立ち上がりインターホンの画面を確認すると、そこにいたのはスーツ姿の高橋だった。
どうしてここに。
いや、来てくれることを少し期待していた。
電話の時にはもうすぐそばまで来てくれていたんだ。

慌てて玄関のドアを開けようとして気が付いた。
そういえば、私すっぴんの上に泣いていたからひどい顔をしてる。

玄関のドアを少しだけ開けてうつむく。顔を上げたら汚れた私の顔を高橋に見られてしまうから。

「来なくてよかったのに」

顔を見られないように強がった口調で応対してしまう。俯いた私の目に高橋の靴先が目に入った。

頭の上でチッと舌打ちが聞こえる。
「泣いてる由衣子をほっとけるはずないだろ。入るぞ」

ぐいっと強引にドアを大きく開けられて高橋が玄関の中に入って来る。
そしてさっさと革靴を脱ぐと私より先に部屋の中の入って行ってしまった。

「あああ、ちょっと待ってよ」

玄関の鍵を閉めて高橋の後を追ったけれど、彼はもう既に当然だって顔をして私の部屋のソファに座りスーツの上着を脱ぎすてネクタイを緩めていた。
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