彼の隣で乾杯を
「とにかく来週の土曜日だからね!絶対だよ!」

珍しく強引ってことは相当行きたい温泉旅館があるんだろう。

高橋はまだTHから戻って来ないし、早希と二人で温泉か。
おいしい料理と早希の話をツマミに美味しい焼酎を飲んで・・・それもイイか。

「お休み取らせていただきます」
「手配は任せてね~細かいことはまた連絡するから」

上機嫌の早希は昼休み終了15分前にタヌキ捕獲のために社長室に出掛けて行った。

神田常務、今日の昼は社長室で監禁されているらしい。

いや、珍しく久保山会長が会社に来ていて、タヌキは社長室で会長と仲良く一緒に昼食をとっているだけなんだけれども。

決してタヌキを逃さないようにと秘書室の方々は早希に頼まれているのだろう。


しかし、来週の土日に温泉旅行だなんて副社長がよく許可したなと思う。
最近ずっと結婚式の準備で忙しそうにしている早希の息抜きのためか、副社長が出張で週末留守にでもするのかもしれない。
だとしたら副社長も早希が週末を一人で過ごすよりは私とセットにしておいた方が安心なのかも。


「来週の土日は早希と温泉旅行してくるね」
「楽しんで来いよ」

もともと来週の週末は会えないと言われている。高橋に宛てたメールには即返信が来た。

こんなメールじゃその裏にある感情は読み取れない。

本当に楽しんで来いって思っているのかなとか。
私って長距離恋愛に向いてないのかもしれない。そもそも恋愛に向いてないのかもしれないけど。

最近、ため息ばかりだわーーーー想いは口に出さないと伝わらないって早希と副社長を見ていて実感したのに。

短時間でもいいから会いたいのにあれからそれも叶わない。
こんな状態で、もしも本当に私がイタリア支社に赴任することになったとしたら。

ーーゾッとする。


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