彼の隣で乾杯を
憂鬱な気持ちを押さえ込んで午後の仕事を乗り切って帰宅した。

膝を抱えて早希のお気に入りのクッションを枕に寝転がる。

もう何もしたくない。
ああああーと声に出して落ち込んでいると、スマホが鳴り出した。
相手はもちろん高橋だ。

「もしもし」

「おう。もう家?」

「うん。さっき帰ってきてゴロゴロしてた」

「悪い、この週末も会えないわ。接待ゴルフが入った。夕方早くには終わるだろうけど、そのままお開きにならないかもしれない。こっちに来てもらっても無駄足になりそうだから、この週末も来なくていいから」

え、今週も会えないの?来週末も会えないのに?
その前に会ったのっていつだったか覚えてる?

「・・・忙しいんだね」

「悪いな。近いうちに都合をつけるから」

「・・・ねぇ、THの仕事は区切りがつくの?」

「由衣子、それってどういう意味?」
高橋の声のトーンが少し変わった。

「もう本社にはもう帰って来ないんじゃないかと思って」

「誰かに何か言われた?」

「そういうわけじゃない。でも気になるよね。もう半年だよ」

口ごもると電話の向こうで「良樹君」と高橋を呼ぶ男性の声が聞こえてきた。

「あー、またきちんと説明するから。悪いな、まだ接待の途中なんだ。また連絡する。何か言いたいことがあるならメール入れとけ。後でちゃんと読むから」

じゃあな、とあわただしく電話は切れてしまった。
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