彼の隣で乾杯を
「ね、結婚しても秘書の仕事を続けるんでしょ?妊娠したらどうするの?」

それは前から気になっていたことだった。聞いてみたかったけれど、タイミングがなくて聞けなかったこと。

「出産までは働きたいけど、その時の体調次第かな。まだわからないけど、産休してその後、育休を目いっぱい取って復職もありかもって思ってる」

「えー、副社長はオッケーしたの?それ」

マジか、早希。
副社長夫人になったら専業主婦になる道もあったけど、早希は仕事を続けるという。そしてそれは出産してもってこと?

「まだ、言ってないけどね」

早希はさらりと言って舌を出した。

そうだろうね。
そもそも副社長は結婚と同時に退職して自分のそばにいて欲しかったらしい。仕事を続けたかった早希は副社長を説得して定時退社の条件で納得させたらしいから。

「それ聞いたら副社長倒れるかもね」

「そーかもね。でもまだ決めてるわけじゃないし。とりあえず結婚式が終わるまで考えることも保留ってことで。そもそも妊娠するかどうかもわからないしね。それは神のみぞ知るってやつよ」

「そうね」

「由衣子だって同じ悩みに直面することになるから」

「そんな日が来るとは思えないけど」

「来るわよ」

早希に言われると、来るといいなと思ってしまう。
その時の相手はもちろん高橋がいい。
ーーーそんな話はないけれど。
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