彼の隣で乾杯を
それから私たちは大浴場の扉を出てその先の露天風呂に移動した。
話が長くなると、大浴場で浸かりながらではのぼせてしまいそうだったから。
こちらは屋根付きの檜の露天風呂と空を見渡すことができる石造りの露天風呂の二つがあった。
そよそよとした風が身体に触れて火照った身体に気持ちがいい。
まずは檜のお風呂にそろそろと足を入れてみると檜の良い香りに気持ちも一層緩んでくる。ぬるすぎず、熱すぎない温度も非常にいい。
「私とエディーは純粋に友人。かなり親しくさせてもらっていたことは間違いないけど、男女の関係なんてこれっぽっちもなかったのに。性別が違うと何かあるってすぐに言われるのはホントに迷惑だわ」
「御曹司はプレイボーイで有名だったからね。それに由衣子だけじゃないの?ここ数年で繰り返しあの御曹司と噂になったのって。私からみたらイタリア出張のあたりまでは彼、本気で由衣子のこと口説いてたと思うけど」
「うん、そういわれれば、そうかも・・・でも、私たち、何もなかったよ」
エディーがタブロイドの紙面をにぎわせるのはいつものこと。
映画祭に誰をエスコートしていたとか、三ツ星レストランに誰と行ったとか。
水上花火大会の船上で女優たちとパーティーしていたとか。
ハグや軽いキスなど日常だし。
それに、確かにエディーは世界中のあちこちで女性たちと遊んでいた時期がある。
それは本人も肯定していた。
『男だからそういう時期ってあるよね』と秘書のニコラスに振ってニコラスからとってもイヤな顔をされていた。
たぶん、ニコラスにもそんな時期があったのだろう。
私が呆れ顔をすると、ニコラスは眉間の皺を深めて『私は人並みでしたよ』と自分の甥孫であり自分の上司であるエディーほどではないと匂わせていたっけ。