彼の隣で乾杯を
「確かに好きか嫌いかと言うと好きだよね、そう言う仕事。でもイタリア行きを断ったのは私自身の選択だよ?」

「俺には関係ない?」

「ないことはないけど・・・」

どう説明すればいいんだろう。
イタリア行きを断ったのは別のことをする可能性があったからなんだけど、今の高橋にどう説明すればいいのか。自分の中でまとまっていないのだからうまく説明する自信がない。

「ね、どうしたのよ、高橋ったら。なんか変だよ?」

由衣子、とかすれた声がしたあと彼が大きく息を吸った。

「俺の行ってる支社への異動願を“高橋由衣子”として出すか、俺の実家のTHコーポレーションに転職して次期社長の右腕の次期社長夫人として働くか、これはちょっと嫌だが今のままの部署で名字だけ変えて働くか、選択肢は三つだ。決めてくれ」

はああ?!

「待って、理解が、頭の中が、追いつかない」

「待たない、すぐに決めろ」

私を後ろ抱きにしたまま高橋が「早く」と急いてくる。

身体に回されている彼の腕に力が入っていることに気が付き嬉しくなってふふっと笑ってしまった。

「笑うなよ」

「笑うわよ。だって」

どの選択肢を選んでも私はあなたと結婚するんでしょ。

「決めたわ」

私は彼の腕にしがみついた。

「答えは4番。今すぐ結婚して名字を変える、でよろしく」

え?っと驚いた彼の腕の力が緩んだところで私はクルっと体の向きを変えて彼と向かい合った。

目を見開いている彼にとっておきの笑顔を見せ
「新婚旅行は1週間よ。そこは絶対に譲らない。末永くかわいがってね、旦那様」
勢いよく抱き付き彼の頭を引き寄せるように半ば強引にキスをした。

飛びついた私をがっちりと受け止める高橋はさすが体育会系。

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