彼の隣で乾杯を

花の名前

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「で、今日いきなり有給休暇取って婚姻届を出してきたって?」

さすがは副社長。驚いた顔も整ってます。
電光石火と呟く副社長の隣に座る早希は驚きすぎて口をはくはくとさせている。


「そういうことです」
「お二人よりも一足先に入籍させてもらいました」

私と良樹は顔を見合わせ笑顔で二人に報告した。


土曜の夜、あの旅館で気持ちを確かめ合って結婚を決めた。
翌日の日曜日は良樹の車でドライブを楽しみながら良樹の両親のところに挨拶に行き東京に戻った。そして月曜の今朝二人で役所に婚姻届を提出してきたのだ。
そして昼休みに副社長室に報告に来たところ。


「なんとまあ」

驚きの後に呆れ顔になっている早希が呟いた。
副社長は早希の手をぽんぽんと宥めるようにしてから私たちに笑顔を向けた。

「もう佐本さんじゃなくて高橋さんってことか。二人ともおめでとう」

「はい、ありがとうございます。康史さんと谷口のおかげでいい旅ができたし、無事に嫁も手に入れることができました」
「ありがとうございます」
私は良樹の”嫁”という言葉に顔が熱くなってしまう。

「由衣子が高橋の嫁・・・」

早希が突然ぽろぽろと大きな涙をこぼし始め副社長がギョッとしてハンカチを取り出した。

「由衣子が嫁・・・」

両手で顔を覆うようにして泣き出した早希を見て私は立ち上がり早希の座るソファーの横に膝をついた。

「うん、好きな人の嫁になったよ。早希のおかげ。ありがとね」

「ゆいこぉ~おめでとう。良かったねえ」

早希は私にしがみついて泣きはじめ私も友の想いが胸にこみ上げてくる。

「ありがとう~さきぃ~」

二人で抱き合いえぐえぐっと幸せな涙を流した。ーーー副社長に引きはがされるまで。

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