彼の隣で乾杯を
私の両親は離婚している。
私ははっきりとした離婚理由を聞かされていない。父はあまり家に帰って来ていなかったし離婚してすぐにどちらも再婚しているのだからW不倫だったのかもしれない。

どちらも私を引き取らず中学生だった私は祖母と暮らした。

大学4年生になり祖母が急に亡くなってしまい、葬儀のために仕方なく疎遠になっていた母に連絡を取ったけれど、葬儀の席でも母とはろくに会話した記憶はない。

それからもう就職が決まっていた私は祖母と暮らした家を出て一人暮らしを始めた。
祖母の家は一人娘だった母が相続していて、そこが今どうなっているのかなど私は知らない。

学費は納入が済んでいたし、祖母が私のために残してくれたお金とアルバイトでためたお金が少しばかりあったから就職するまでの金銭的な不安はなかった。

両親とはほとんど連絡を取っていない。
年賀状のやり取りをする親戚よりも薄い関係で、私は父のことも母のことも思い出したくないし親愛の情など欠片も感じない。
今では向こうも電話一つかけて来なくなったから同じような思いでいるのだろう。
どちらも新しい家庭があって、もしかしたら子どももいるのかもしれない。
半分血の繋がった弟妹がいたとしても驚かないけれど、私には彼らのことを身内だと思うことはできないだろう。


不倫をする人はクズだと思っていた。
家庭を壊し、わが子まで捨てるのだ。
それが、ーーーまさか自分が当事者になってしまうとは。

思い出すと、悪寒が走り吐き気がする。
認めたくないけれど、結局私にはあの両親の血が流れていた。

それから小林主任とプライベートの関係を絶った。しかし、仕事だけはどうしようもない。
仕事を辞めようかと思い詰めた頃、タイミングよく小林主任の北海道への転勤が決まり私は会社に残留することができたのだった。

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