彼の隣で乾杯を
私は完全にエディーに背を向けエディーの秘書のニコラスの姿を探した。
彼が御曹司のエディーからそんなに離れたところにいるはずはない。絶対にこの近くにいるはずだ。

「ユイコ、今は僕と話す時間だ、ニコラスは関係ない」
「関係ないはずないじゃない。むしろ大アリでしょ」

きょろきょろとする私の両肩にエディーの両手がかかる。
ええーい、ニコラスはどこだ。


あ、いた。ニコラスはなぜか御曹司を放置してこちらに背を向けた年配のカップルと親し気に話をしていた。

「ニコラ・・・」呼ぼうと思って出しかけた声を止める。

「あれ、ユイコ。せっかく発見したニコラスを呼ばないのかい?」
エディーは満面の笑みだ。

「意地悪ね、知ってたんでしょ、ニコラスが誰と一緒にいるのか」

「ああもちろんね。どちらにしても彼らはこちらやって来るから。今更って感じだけど」

鼻歌でも歌いだしそうなエディーと対照的に私は眉間にシワを寄せる。

逃げた方がよさそうだ。
私が出口に向かって歩き出そうとすると同時に「ユイコ」と後ろから声がかかってしまった。

時すでに遅し、逃げ遅れた。

「ユイコ、久しぶりだね。よく顔を見せておくれ」

私は観念して満面の笑みで振り返った。

「ご無沙汰いたしております。社長、奥様」

そう、声をかけてきたのはアンドレテ社の社長とその奥様。つまり、エディーのご両親。

「ユイコと会うのは半年振りだ。さらにきれいになったね」

社長が息子と同様ハグと頬にキス。
しかも、奥様の目の前でちょっとハグが長いんじゃないかな。

そんな夫の姿を笑顔で見守る出来た妻。
もはや慣れっこになってて何も感じないのか、イタリア人がこうなのか?私の感覚ではわからない。
続いて私は奥様とハグを交わした。
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