彼の隣で乾杯を
「まあ、あなた。エディも少し落ち着きなさい。ユイコが困っているじゃないの」
二人を諫める声がしてほっと息を吐くことができた。

さすが奥様。ホッとしてパチパチと内心で拍手したのもつかの間…

「まだユイコのご両親にご挨拶もしていないのに婚約発表だなんて。今日はとりあえず仮の発表にして。ご挨拶が済んでからよ。正式に発表するときにはこれよりずっと大々的にやりましょう」
ぱちっと両手を叩いて名案だとばかりに胸を張って笑顔を見せている。

えええー。
更に爆弾が投下された。何言ってくれちゃってんだ、奥様。

「おお、いいね。さすが我が妻」

「そうだね、僕とユイコの婚約発表なんだからもっと盛大にやるべきだ」
なんて賛成してる父と息子。

これでもイタリアきっての大企業の経営者一家。冷静で素早い判断、確実な投資と評判の社長とその後継者である息子。

どうしてこんなバカ話をこんな大事な場所でするのか。
これってイタリアンジョークだよね?

ダメだ、悪寒がする。

周りで聞き耳を立てている皆さんがどうか冷静な正しい判断をしますように。
株価に影響が出ませんように。

「ニ、ニコラスはどこかしら?」
こうなったら私が今頼れる相手は秘書のニコラスしかいない。
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