彼の隣で乾杯を
「僕はユイコに僕と結婚して欲しいと言っただけだよ。何も非難される筋合いはない」
エディーは心外だとでもいうように目を細めた。

「エディー、あなた達ったら私の意思を確認しないで婚約発表をするって言ったじゃないの。それもこの場で」

「そうでもしなきゃユイコは逃げるだろ」

当ったり前じゃないの。逃げますとも。
私は眉を吊り上げた。

「エディー、婚姻に当事者の意思がないなんてあり得ません。そんなことしたら由衣子は確実にあなたから逃げてしまいますよ。それも本当に二度とあなたの手の届かないところにね」
ニコラスが落ち着いた声でエディーに語りかける。

さすが、ニコラス。

うーん、それは困るなあとエディーはうなった。
「ユイコ、キミはそんなに僕の事がキライなの?」

やめて、その仔犬顔は。ホントにいつもその顔で見つめられていろいろと断り切れなくなってしまうのだから。

これ、私の周りの日本人男性がやっても何ひとつ響きもしないけど、エディーのはいつも母性本能をくすぐられてしまう。それで私にも母性本能があったんだなって気づかされたくらい。

「そんな、キライだなんて言ってないわ。ただ、私には好きな人がいるし、あなたとのそういう関係を望んでいないだけ」

「嫌われてはいないんだね。じゃ、あと少しだけ待ってあげる。それでもユイコとその彼の仲が進展しなかったら、その時は僕のことを受け入れて」

そんな。
そういう事じゃないとさっきから言ってるんだけど。

「エディー、そんなの無理だから」と言う私に「僕は僕でこれからは真剣に君にアプローチをかけていくよ」とエディーは笑った。
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