彼の隣で乾杯を
「うーん、彼は・・・ユイコの想い人ではないね。でも、彼の方はユイコのことを特別に想っているみたいだけど」
主任の背中を見送っていると、エディーの声が私の耳元近くもすぐ後ろで聞こえて驚いて飛びのいた。
「び、びっくりした」
どうしてそう思ったんだろうという疑問はあるけれど、あえて彼の発言を無視をする。
「上司の方に頼まれたことですし、送りますね」と私のスーツケースに手を伸ばしたニコラスに「大丈夫。自分の荷物くらい自分で運ぶわ」と笑顔で断りをいれる。
「いいえ、男が二人もいて女性に荷物を持たせるなんてことはあり得ません」
ニコラスは目尻に優しい皺を浮かべいつもの紳士の微笑みで「さあ行きましょうか。車を待たせてあります」と私を促して歩き始めた。
こんな風に言われたら断れない。
「ありがとう、ニコラス」
ニコラスに笑顔を返して隣に並んで私も歩き出す。
仕事は大変そうだけど、ずっと心の重荷になっていた主任と同行しなくていいという事実に心がずいぶん軽くなった。
「ユイコの笑顔が見られるならこのままどこまででもお供しますよ」と目を細めて笑うニコラスに「じゃあ、金曜の大使館のレセプションのエスコートもニコラスに頼んじゃおうかしら」とウインクし冗談まで出てしまう。
実はこのイケメンオジサマのニコラスは私の憧れである。
物腰柔らか、若い頃はずいぶんと女性を惹きつけたであろう造作の整ったお顔には適度なしわが加わっていてそれがいい味を出している。
おとぎ話の中に出てくる異国の王子様が年齢を重ねたらこうなるんじゃないだろうかと私の想像を駆り立てている現実に存在するのにある種の夢の世界の男性。
「ちょ、ちょっと待って、ユイコ」
並んで歩く私たちにエディーが慌ててる。
「大使館のレセプションのエスコートって?」
「さっきの上司と行くはずだったけど、今の感じだとちょっと無理かなーっと思って。あ、誰もいなければ1人で行くから大丈夫よ。もちろんエスコートの話は冗談だから」
ふふふと笑うと、
「エスコートなら僕がいる」とエディーが胸を張った。
「だから、冗談だってば」
軽い気持ちで言ったことばが大事になりそうな嫌な予感がする。
「いや、エスコートなしでレセプションには行かせられない。ボクに任せて」
「ホントに冗談なの。フランスから誰か来るから心配しないで」
心の中に嫌な汗が流れる。
「でも」となおもエディーが食い下がるから困った顔をしてニコラスを見上げた。
「エディー、本当ならあなたはまだ日本にいるはずです。それを無理やり帰国したんですからこちらでそれなりに働いてもらわなければなりません。そのレセプションは社長が出席する予定ですし、あなたの金曜日は朝からぎっしり予定が詰まっていますからね」
そんなニコラスの援護も効果なく「一番の仕事はそれじゃない。金曜日はユイコを迎えに行くんだ」とエディーの顔から笑顔が消えることはなかった。
ニコラスの大きなため息に私は自分の失言を呪った。
主任の背中を見送っていると、エディーの声が私の耳元近くもすぐ後ろで聞こえて驚いて飛びのいた。
「び、びっくりした」
どうしてそう思ったんだろうという疑問はあるけれど、あえて彼の発言を無視をする。
「上司の方に頼まれたことですし、送りますね」と私のスーツケースに手を伸ばしたニコラスに「大丈夫。自分の荷物くらい自分で運ぶわ」と笑顔で断りをいれる。
「いいえ、男が二人もいて女性に荷物を持たせるなんてことはあり得ません」
ニコラスは目尻に優しい皺を浮かべいつもの紳士の微笑みで「さあ行きましょうか。車を待たせてあります」と私を促して歩き始めた。
こんな風に言われたら断れない。
「ありがとう、ニコラス」
ニコラスに笑顔を返して隣に並んで私も歩き出す。
仕事は大変そうだけど、ずっと心の重荷になっていた主任と同行しなくていいという事実に心がずいぶん軽くなった。
「ユイコの笑顔が見られるならこのままどこまででもお供しますよ」と目を細めて笑うニコラスに「じゃあ、金曜の大使館のレセプションのエスコートもニコラスに頼んじゃおうかしら」とウインクし冗談まで出てしまう。
実はこのイケメンオジサマのニコラスは私の憧れである。
物腰柔らか、若い頃はずいぶんと女性を惹きつけたであろう造作の整ったお顔には適度なしわが加わっていてそれがいい味を出している。
おとぎ話の中に出てくる異国の王子様が年齢を重ねたらこうなるんじゃないだろうかと私の想像を駆り立てている現実に存在するのにある種の夢の世界の男性。
「ちょ、ちょっと待って、ユイコ」
並んで歩く私たちにエディーが慌ててる。
「大使館のレセプションのエスコートって?」
「さっきの上司と行くはずだったけど、今の感じだとちょっと無理かなーっと思って。あ、誰もいなければ1人で行くから大丈夫よ。もちろんエスコートの話は冗談だから」
ふふふと笑うと、
「エスコートなら僕がいる」とエディーが胸を張った。
「だから、冗談だってば」
軽い気持ちで言ったことばが大事になりそうな嫌な予感がする。
「いや、エスコートなしでレセプションには行かせられない。ボクに任せて」
「ホントに冗談なの。フランスから誰か来るから心配しないで」
心の中に嫌な汗が流れる。
「でも」となおもエディーが食い下がるから困った顔をしてニコラスを見上げた。
「エディー、本当ならあなたはまだ日本にいるはずです。それを無理やり帰国したんですからこちらでそれなりに働いてもらわなければなりません。そのレセプションは社長が出席する予定ですし、あなたの金曜日は朝からぎっしり予定が詰まっていますからね」
そんなニコラスの援護も効果なく「一番の仕事はそれじゃない。金曜日はユイコを迎えに行くんだ」とエディーの顔から笑顔が消えることはなかった。
ニコラスの大きなため息に私は自分の失言を呪った。