彼の隣で乾杯を
エスコートのお相手は?
主任は翌朝早くにベネチアに戻って行った。
あちらの残った仕事を片付けて、大使館のレセプションパーティーのある明日の朝にはまたローマに戻ってくることになっている。
昨夜の告白を聞いた後で主任に対する暗い感情が薄れている。共に大使館のレセプションに行くことにも前より抵抗感がなくなっている。
なんと言ってもビジネスだし。
受け入れることはできないけれど、当時の主任の状況を知り私が思っていたような不倫関係じゃなかったことに大きく安堵した。
イタリアに来てはじめて少し時間をかけてホテル内のカフェテリアで朝食をとることにした。
私の今日の予定はいくつかの商談とイタリア支社になる予定の不動産物件の視察、本社への報告と午後のものばかりでゆっくりと朝の時間を過ごすことができることになっていた。
この国の朝ご飯はわりと簡単に済ますのが常識らしく、このホテルでもビスケットやマーマレードの付いた甘いパンとエスプレッソなどで終わりと言うシンプルなもの。
もちろん希望すれば違うものも食べられるけれど。
毎朝しっかり食べている私にとってビスケットでは物足りないし、濃いめのエスプレッソでは胃に負担をかけそうなので、サンドイッチとフルーツを頼んだ。