彼の隣で乾杯を
突然現れたイタリアの有名企業の御曹司にも林さんはすぐに状況を理解したらしく落ち着いた様子で挨拶をしていた。
ううーん、さすがわが社の重役候補。

「やあ、久しぶりだね、林君。こっちに来ていたとは知らなかった。君はまさかとは思うけど、ユイコのパートナーの座を狙ってはいないよね?」

エディーは多くの女性を虜にするあの瞳で探るように林さんを見やる。

「滅相もない。私はわが社の大事な佐本さんに男として自分を選んでもらおうだなんてそんな野望は抱いておりませんよ」

「ははっ。それならいいんだ。君はなかなか強敵だからね。副社長の康史は大事な女性がいると言っていたから心配なさそうだけど」

この二人…ビジネスマンの挨拶としてどういう内容なのか。

盛大に呆れつつ、更に会話の中に副社長の名前が出てきて私は眉間にシワを寄せた。

副社長の『大事な女性』っていうのが早希のことを言っているのか、それとも別の女性が指しているのか、私にはわからない。

今早希は実家近くの会社で忙しく働いているらしく、離れているためなかなか会うチャンスもないけれどお互い連絡だけは頻繁にしている。
ただ相変わらず、私に副社長とのことを話してくれない。彼女にはまだ時間が必要だという事なんだろう。
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