彼の隣で乾杯を

「あのさ、帰国したら、俺しばらく出張になるんだ」

高橋の逞しい腕にぶら下がるようにしながら歩いていた私は顔を上げた。

「しばらくってどの位?」
「早くて2ヶ月半、長ければ3ヶ月かそれ以上か・・・ってとこかな」

「どこに?遠く?新幹線?」
「だいたい新幹線で一時間半ってとこだな」

「微妙な距離だし、期間も長いね」
「ああ」

高橋と過ごす休暇で浮かれていた気持ちが一気に下降した。そっか、1ヶ月半以上会えないのか。

新幹線で一時間半は近いけれど、だからといって私と高橋の関係は親しい同期。わざわざ会いに行く関係じゃないし、二人の抱える仕事量を考えると会う時間はないだろう。

2ヶ月半か、もしかして3ヶ月で済まない可能性もあるかもしれない。

仕事を詰め込んでしまえば忙しさに紛れて乗り切れるだろうか。
ここ数年は月に2、3回高橋と会っていた。さすがにこのところはあまり会えてなかったけど、それでも1ヶ月以上会わなかったことはほとんどない。

「…頑張ってね」
俯いて声を絞り出した。

「ああ、由衣子もな」
「うん」
ーーー高橋の声は平静でいつも通りのように聞こえる。

あなたは私に会えなくても淋しくないんだね。
わかってたけど。
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