ストロベリームーン
「ねぇ、しようか」
小春がキスの間に囁いた。
小春の息が世那の口の中でそよぎ、それさえもキスの一部のようだった。
「ご飯は?」
「後からでいいよ」
小春は春巻きの皮を置くと世那の手を取った。
寝室にはすでにキャンドルが灯されていた。
まるで海外の映画のワンシーンのようで、こんなセッティング相当キザか遊び慣れた男じゃないとできない芸だ。
女は女が大事にするムードというものをよく分かっている。
小春が世那の肩に手をかける。
「世那は今日は何もしなくていいから」
小春はそう言うとまた唇を寄せてきた。
世那のちゃんとした順番の記憶があるのはそこまでだった。
風も吹いていないのにずっとキャンドルの炎が揺らいでいるように見えた。
世那が準備していた情報は熱い炎で燃やされ役に立たなかった。
小春は世那がネットで見た怪しげな道具は一切使わなかった。
小春は小春の10本の指と、そして唇、唇は舌と歯先を使い、ときにはその鼻の先で世那の肌をくすぐった。
小春は全身を使って世那を探っていった。
小春の指が世那の中に差し込まれた時大きなため息が出た。
ただ見つめるだけだった小春の指が今自分の中にあるのだと思うと、あの細い指がこんなにも大きな存在感を持つものなのかと驚く。
小春が律動を始めると鋭い快感が突き上げてきて目の前が真っ白になる。
熱い疼きが下半身を痺れさせ、だんだんと上の方に上がってくる。
「小春、小春」
無意識に小春の名前を呼ぶと、小春はそれに応えるように激しく世那に口づけた。
躰全体が甘美な毒に犯されたように痺れ、必死で小春にしがみついた。
涙が溢れて頬を伝った。
これがセックスなんだ。
セックスとは心が伴って初めて完成するものなのだ。
今まで世那が何人かの男と交わしてきたセックスとは次元が違うものだった。