ストロベリームーン
あの女の子だった。
世那がリョウと同じように璃々子に見せつけた写真に写っていたあの女の子だった。
「それで蓮はなんて?」
璃々子は嫌な予感がしていた。
蓮が消えた理由がここにあるような気がした。
もしかして蓮はこの子と……。
「あいつさ、シリアスにおまえのこと好きなんだな」
リョウはしげしげと璃々子を見ながら顎をさすった。
「あいつきっぱり言ったんだよ。僕には璃々子がいますからって」
璃々子はめまいがした。
ふらつきそうになる体を支えたかったが、目の前のリョウにしがみ付きたくなくてどうにか自力で立つ。
蓮が璃々子と焼肉を食べていて中座したあの時、蓮はリョウに会っていたのだ。
あの時の蓮の電話の相手はリョウだったのだ。
そして問題の腕時計。
リョウはその時に蓮に取ってきてもらえるように頼んだのだと言う。
「なんで直接わたしに言ってこないのよ」
璃々子はリョウに詰め寄った。
蓮が腕時計を盗んだと知った時、璃々子の心は真っ二つに斧で割られたようだった。
無駄にあの想いをしたのかと思うと今にも目の前のリョウを絞め殺したい衝動に狩られる。
「どこに時計を忘れたのか100%シュアじゃなかったんだ。万が一璃々子のところじゃなかったらまるで俺が璃々子と寄りを戻したいみたいじゃんかよ。頼んだって言うか、軽くちょっと探して見てくれないかって言っただけだよ」
「この馬鹿—————!!!」
璃々子はリョウを突き飛ばした。
「馬鹿、馬鹿、馬鹿、馬鹿———!」
相撲取りのようにリョウの胸を突くと、その場にしゃがみこんだ。
「蓮————!」
人目もはばからず璃々子は声をあげて泣いた。
50万を疑った時もあった。腕時計は蓮がお金のために盗んだのだと確信していた。