ストロベリームーン
「ねえ、年上の男?それとも年下?わたし世那ちゃんはしっかりしてるから年下の男がいいと思うよ」
「そうかなぁ、僕はぐんと年上の男がいいと思うけどな」
璃々子と孝哉は勝手に2人で言い合っている。
彼氏とか、男とかいう言葉を聞きながら世那は後ろに回した両手を強く握りしめた。
手の内側に汗をかく。
「あの」
出した声が少し震えた。
「わたしの新しい彼って、彼じゃなくて彼女なんです」
璃々子はゆっくりと数回瞬きをし、孝哉の方を見た。
孝哉も困ったように押し黙る。
世那は唇を噛みしめる。
分かっていたはずだ。
普通の人の反応はこんな感じだって。
でも小春を小春じゃない誰かのように言いたくない。
小春を隠したくない。
自分も隠れたくない。
だって悪いことをしているわけではないのだ。
「もしかして世那ちゃんの彼女って小春ちゃん?」
鋭い璃々子。
女はどうしてこういうことに関してこんなにも鋭いのだ。
世那は思い切ってうなずいた。
「そっかぁ、小春ちゃんかっこいいもんねぇ。好きになっちゃうの分かる分かるぅ、ね、孝哉っちもそう思わない?」
孝哉は2度小さくうなずいた。
急なこの展開に世那は戸惑う。
こんなにすんなりと受け入れられていいのだろうか?
そうだ、絶対にこの後からそれは今だけだとか、そのうちまた男と恋に落ちるから心配するなとか言ってくるに決まっている。
「ディズニーランドで結婚するならわたしも招待してね」
頭がお花畑の璃々子め。
世那は伺うように孝哉を見た。
目が合った孝哉は「なに?」と眉を上げた。
「あの、他に何か言うことないんですか?わたしの相手、女ですよ。もっとこう驚いたり、説得したりとかしないんですか?」
「なんでそんなことするの?」
璃々子が不思議そうに首をかしげる。