ストロベリームーン
蓮の身の潔白が証明された璃々子は態度がでかくなっている。
確かに璃々子の言うことも正しい。
それに本当のところは隼人にしか分からないのだ。
隼人に限らずみんなそうだ。
その人の心を覗くことができない以上、本当のところは分からないのだ。
できたら隼人はただのサイテーな男であって欲しいと願うのは自分1人が悪者になりたくないと言う世那の逃げだろうか?
ざっと音がして3人は一斉に窓の方を見た。
風になぶられた雨がカーテンがたなびくように窓ガラスを撫でる。
「ひどくなる前にちょっくら買い物に行ってくるかな」
「孝哉さんわたしが行きますよ」
「あ、じゃわたし世那ちゃんと一緒に出る。孝哉っちお会計お願い」
璃々子はバックから財布を取り出した。
世那は味も素っ気もない自分のコンビニの傘とは対照的の璃々子の女らしい花柄の傘を見あげた。
「そういう傘って置き忘れたときショックとかじゃありません?」
璃々子はちらりと世那を見た。
「わたしぐらいの歳になるとこういう些細なところに気を使わないと貧乏ったらしいただのおばさんになっちゃうのよ」
璃々子は自分ではそう言うが、璃々子におばさんと言う言葉を重ねるには無理がある。
「璃々子さんって、なんで今まで結婚しなかったんですか?」
はっきり聞くわねーと言いながらも璃々子は全く気分を害しているように見えなかった。
「結婚したかったよ。でもできなかったの。結婚したいと思う男にはいつもわたしフラれちゃってさ。わたしはこの人が運命の人!って思ってるんだけどねぇ。1度かなり好きだった男におまえ結婚結婚って怖いんだよって言われて、それからそういうの出さないようにしたの」
「今の若い彼は?」
璃々子は前を向いたまま微笑んだ。
「蓮くんは大好き。今までの男の中で1番好きかもしんない。運命の人の中でも1番の運命の人って感じ。でも結婚は考えてない。蓮くんまだ若いもん、夢もあるし。わたしなんかと結婚させちゃったら可哀想」