ストロベリームーン

小春の引越し


 小春が突然引越しをすると宣言したは、世那が新しい傘を奮発して買った日、小春の家に寄った時のことだった。

「えー、ここ引っ越しちゃうのもったいない。せっかく素敵な部屋なのに」

「うん、でももう決めたの」

 小春は会社を辞めてから、フリーでライターの仕事や物撮りだが写真の仕事を受けていた。

 と言ってもそんなに仕事があるわけではなく、それらの仕事の間に割りのいい日払いのバイトもやっているみたいだった。

 もしかしたら少しでも家賃が安いところにと思っているのかも知れない。

「でももったいないなぁ、ここ」

「次のところもまたDIYするよ」

「え〜、だったらますますなんでわざわざ引っ越すの?ここでいいじゃん」

「もう決めたんだ。引越し世那も手伝ってね」

 最近世那は小春の性格がよく分かってきた。

 小春から聞いただけで実際に会ったことがあるわけではないが、小春の例の両親、さすがその両親あってのこの娘だと思う。

 よく言えば自由、悪く言えば勝手。

 でも世那はそんな小春をますます好きになった。

 小春と一緒だとなんでも楽しかった。

 新しい小春を発見すると小春の好きが1つ増えた。



 せめて梅雨が明けてから引っ越せばいいのにと思ったが、小春は着々と部屋探しを進め、ほどなくして笹塚の物件に決めると6月の後半に引っ越すことになった。

 当日はまさに梅雨の晴れ間といった感じの日で朝から晴天だった。

 小春は強運とまではいかないが、結構ツイてると人だと分かってきたのも世那の新しい小春の発見の1つだ。

 小春は引っ越し業者は頼まずに自分でバンを借りた。

 当日朝から小春に連絡がつかないので直接千駄木の小春の家に行くとすでに3人の男たちが家具やダンボール箱を家から運び出していた。

 3人とも頭に白いタオルを巻いている。



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