ストロベリームーン
「いいでしょ」
小春は嬉しそうに言う。
確かに夏はバーベキューなどできて楽しそうだが、暑すぎて熱中症にならないか心配だ。
冬は冬で寒そう。
「面白そうだけど、いろいろ大変そう」
小春の荷物が多くないといっても部屋の3分の2は荷物で埋まってしまい、洗濯機は当たり前のように外に置かれた。
荷物を運び終えるとだだ広い屋上に引っ越しで使ったダンボールを何枚か敷き、そこに小春の弟が作って来たランチを広げた。
荷物から食器を探さなくていいように、プラスチックのコップや皿が準備されていた。
さながらピクニックだ。
小春の弟のサンドイッチは驚くほど美味しかった。
さすがプロだ。
噛みしめるほどに味が出てくるパンに生ハムやスモークサーモン、アボカドのディップなどがアメリカンスタイルでどっさり挟まれている。
それを顎が外れそうなほど大口を開けてかぶりつくと、バルサミコソースが滲み出てきて口の端から垂れる。
慌てて紙ナフキンで拭う。
ノンアルコールのサングリアまであった。
パート1とパート2は小春の弟を褒めちぎりながらすごい勢いで食していく。
「源(げん)ちゃんをお婿に欲しいわぁ」
パート2がしみじみと言う。
源が働いているレストランは料理に使う素材は全てオーガニックというこだわりの店なのだそうだ。
「これからの時代はオーガニックだよ。地球と体に優しい、これ大事だよね。客は若い女性ばっかりと思うだろ?でも意外とビジネスマンが1人で食べに来たりするんだよ」
源は今日のサンドイッチも全部オーガニックの食材で作ったと言う。
そう聞くと美味しいだけでなく、一口食べる毎に体が健康になっていく気がする。
「あんたがもう少し痩せればもっと説得力あるよ」
源の横で小春がピクルスを齧りながら言う。
源はサンドイッチを持った手で小春を指差し世那の方を見た。