ストロベリームーン
蓮の告白
たりらりらりん、らりらんらん。
冷房が入った店内は少しひやりとする。
梅雨の晴れ間といった感じの今日は1日初夏のように爽やかで昼間は暑いくらいだった。
そんな天気とは裏腹に蓮と会えなくなってからの璃々子の気持ちはずっと沈んでいた。
今日も1日無理に笑顔を作って働いたせいでなんだか疲れた。
蓮を探してこのコンビニに来るのは久しりだった。
璃々子はこのコンビニで蓮を見つけることを半ば諦めかけていた。
根拠はないが蓮はもうここで働いてないような気がした。
今日も蓮を探してと言うより、たまたまこの近くに来たのでちょっと寄ってみただけだ。
通りかかった鏡を覗くと髪が乱れ、疲れが顔に出ている。
髪を整えにこっと笑ってみたが、こめかみに青筋が出ただけだった。
璃々子は短く息をついた。
若い頃は多少疲れていても気合いでなんとかなった。
今はちょっとでも疲れていると顔に出る。
それどころか自分は元気だと思っているのに顔は疲れていたりする時もある。
ただ単に蓮はもう自分を必要としなくなっただけなのかも知れない。
そんな言葉が浮かんだ。
蓮は若い、いつか別れは来る。
それは最初から覚悟していた。
その時は美しく別れようと決めていた。
そう思うと急に今こうやって姿を消した蓮を探してバイト先に足を運ぶ自分が未練がましいみっともない女に思えきた。
このまま蓮を行かせてしまった方がいいのではないか。
このまま蓮を手放して自由にさせてあげるのが大人の女のすることではないだろうか。
でも、と璃々子は思う。
璃々子は蓮にすがるつもりはないのだ。
別れたいと言う蓮を説得するために探しているわけではない。
ただ璃々子は聞きたいだけ。
蓮に最後に聞きたいのだ。
なのに、いきなりいなくなるなんてひどい。
何も言わずになんてひどい。