ストロベリームーン

「小春、どうして」

 小春はすでに蓮と源が小春の家の前に到着していると知ると鍵を璃々子に渡し自分は戻って来たのだと言う。

「なんか気になって」

 2人は並んで駅へと歩き出す。

「ねぇ小春、孝哉さんのことだけど」

「孝哉さんがなに?」

「うん……孝哉さんなんだけど」 

 世那は言い淀む。

「事件のこと?」

 世那は立ち止まる。

「知ってるの?小春」

 数歩先に進んだ小春が振り返る。

「うん、最近気づいたんだけど。ほら前に世那と一緒に見たストロベリームーンをネットサーフィンしてたら、事件の記事が出てきたの」

 見出しに大きく『赤い満月の狂気』と書かれていて18年前で若くはあるがすぐに孝哉と分かる顔の写真と名前が載っていたらしい。

 小春が孝哉からもらった名刺と漢字もぴったり同じで小春は確信したそうだ。

 孝哉が世那に言ったことは本当だった。

 殺人を犯したということも15年間刑務所に入っていたのも事実だった。

「孝哉さんは彼女が孝哉さんに殺してって言ったって」

「孝哉さんがそう言ったの?」

 孝哉は法廷では何も言わなかったらしい。

 孝哉はストーキング行為の果てに身勝手な恋心で相手女性を刺殺したとされていた。

「ストーキング?だって相手は孝哉さんの彼女でしょ?」

「それが2人が付き合っていたと言う事実はないみたいなんだよね、それどころか彼女と孝哉さんは面識さえもなかったらしい」

「そんな」

 だったら孝哉がずっとしているあの指輪はなんなのだろうか。

 それに孝哉の寝室にあったあの写真たちは、あれは孝哉が撮ったものではないのか?

「ここからは出どころの怪しい情報なんだけど」

 殺された彼女は複数の男性と関係があったという。

 ただそれらのことは彼女の両親がひた隠しにし法廷で晒されることはなかった。

 孝哉と彼女が全く面識がないというのは嘘で、孝哉は彼女の数多い男のうちの1人じゃないだろうかと言われている。


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