ストロベリームーン
小春の家に着くとすでにパート1と2も到着していて、屋上に運ばれたテーブルの上には酒瓶や食べ物が所狭しと並べられていた。
キッチンでは源がすごい勢いで何かを刻んでいて、それを横で見ている蓮と世那の目が合う。
「どうも」
蓮は顎を少し突き出す。
なんだか変な感じだ。
パート1と2は見かけ通りの大酒飲みで、引越し早々近所から苦情が来るのではないかと冷や冷やするような大声をたてる。
同じ酒好きの璃々子は彼らともすぐに打ち解けていた。
「やだなに、あなたまだ蓮ちゃんにすっぴん見せたことないのぉ?わたしと一緒だ」
パート1が璃々子に言うとパート2が速攻突っ込みを入れる。
「あんた42年間彼氏できたことないじゃない」
世那はパート1はもっと若いかと思っていたので内心驚く。
「それでいつ清水の舞台から飛び降りるの?」
パート1は両手を胸の前で握って飛び降りる真似をする。
「籍を入れてからかな?」
璃々子はふふっと笑って首をかしげる。
「やっだー。ねぇ蓮ちゃんもしこの子のすっぴんが超ブス子だったらどうするの?」
蓮は笑ってごまかすと、空いた皿や瓶を持って席を立った。
源と小春は何やら話し込んでいる。
世那は手に持ったコップを口に運ぼうとして中が空なことに気づく。
テーブルの上に2リットル入りのコーラのペットボトルがあったがすでに時間がたってぬくるなっている。
世那は席を立った。
部屋に入ると蓮がキッチンで洗い物をしていた。
「えらいじゃん」
世那は冷凍庫から氷を取り出しコップに入れる。
「いつも源が作る係で俺が洗い物係り。小春は何もしないでそれを見てる係り。つかよくあんな怖い女の彼女になる気になったな、もともとのんけだろ」
世那はそれには答えずシンクに寄りかかって氷を口に含んだ。
蓮は横目で世那をちらりと見る。
「まぁ、でも小春が好きそうな顔だよな」
「顔?」
世那の頬が氷で膨らむ。
「あんたの顔」
「あんたって誰よ」
世那がすごむと蓮は両肩をあげた。