ストロベリームーン
通っていた高校は辞めてしまったのか、お嬢さまっぽい制服姿の彼女を見かけることはなくなり、代わりに露出度の激しい服を着た彼女を平日の昼間から見かけるようになった。
ある日大学の授業をさぼって家でゴロゴロしていると1通のメールが届いた。
どうやって僕のアドレスを知ったのか彼女からだった。
『久しぶりに遊ぼうよ。今日ヒマ?』
金がなかった僕はファミレスで彼女と待ち合わせた。
久しぶりに近くで見る彼女はとても綺麗になっていて、露出された白い肌が眩しくて目のやり場に困った。
僕らはドリンクバーだけで長々と居座り、その後は近所のショッピングモールをぶらぶらした。
一方的に彼女が話をしていた。
話していたが彼女自身の話は一切せず、ほとんどテレビドラマや芸能人のゴシップ話ばかりだった。
彼女は白いハンカチを持っていて、それだけが昔の彼女と同じだったが、派手めな外見と清潔な白いハンカチはひどく不釣り合いだった。
それから彼女はときどき連絡してくるようになり、僕らはただの暇潰しのような時間をだらだらと過ごした。
まだ化粧慣れしていない顔に赤すぎる唇が妙に生々しくて、僕は何度も彼女の唇を盗み見た。
彼女とまた会うようになって僕はまた彼女が好きになった。
僕は同じ女の子に2度恋をしたのだ。
彼女は大学にいる女の子たちとは違う、何かを内に秘めているような、そんな魅力があった。
噂の彼女の男関係について僕は一切触れなかった。
触れるのが怖かったのかも知れない。
触れたら最後、針で突かれた風船のように僕らの時間が終わってしまいそうだった。
その日もドリンクバーでだらだら過ごした後、ショッピングモールをぶらぶらしていると、特売セールをしているアクセサリーショップで彼女が足を止めた。
欲しいのかと思って『買ってあげようか?』と言うと、嬉しそうな顔をした。