ストロベリームーン
カフェドベルジク
世那は窓際のテーブル席を片付ける。
2本のビール瓶。
2つあるグラスの1つは綺麗なままだった。
そういえばグラスは使わず瓶からそのまま飲んでいたな。
上下する喉仏は遠目で見ていてもごくりごくりと聞こえてきそうだった。
璃々子が連れてきた神崎蓮と言う男はどう見たってホストだ。
実際のホストを見たことがある訳ではないが前に動画で見たことがある。
そもそも名前じたいがホストっぽい。
本当の名前だろうか。
歳は自分といくつも変わらないように見えた。
璃々子とどんだけの歳の差なんだ。
当たり前のようにここでの会計は璃々子が払った。
大した金額ではないがあの蓮という男は奢られ慣れてる感満載だった。
『蓮くんはヴォーカルやってるのよ。正確に言えばギター&ヴォーカルだっけ、ね?蓮くん』
自慢げにそう話す璃々子の手が蓮の膝を撫でている。
璃々子の妙に色っぽいその手つき。
もうヤッタのか。
経験は少ないがそれぐらい分かる程度に男と女を知っている。
『一応というか本気でプロ目指してます』
世那には『僕解消のない男です』としか聞こえないセリフに璃々子は目を輝かせる。
『夢を持っている男の人って素敵。蓮くんなら必ずなれるよ』
璃々子は蓮にメロメロだった。
これからたっぷり蓮に巻き上げられるとも知らずに。
トレイをカウンターに置き世那は中の孝哉に問いかける。
「どう思います?あの蓮とかいう男の人」
さっきまでいた璃々子と蓮が店を出て行った後、世那は初めて言葉を発した。
孝哉から話しかけてくるのを待っていた世那だったがいつまで経っても何も言わない孝哉についに世那は痺れを切らした。
「どうって?」
「璃々子さん絶対騙されてますよね」
言ってしまった。