ストロベリームーン
着飾った若い男がたくさんいても、璃々子には蓮がダントツだった。
蓮だけが輝いて見えた。
蓮が璃々子の王子だった。
他はジャガイモやカボチャだった。
ジャガイモやカボチャをぬって2人は進む。
他にもいろいろ流れてくる。
ナス、ニンジン、タマネギ、ワラジ。
「璃々子」
流れてきたワラジがしゃべった。
「リョウ」
久しぶりに見るリョウは相変わらずわらじのような顔をしていた。
蓮が横にいるとリョウのわらじ度が跳ね上がる。
もはやわらじのようなではなく完璧なわらじだ。
リョウは璃々子と蓮を撫で回すようにして見る。
「オーマイガーッ」
ニヤつく口元からのぞく歯はやけに白い。
アメリカ人に比べて日本人は歯への美意識が低すぎる、とリョウはまるで自分は日本人ではないかのようによく宣っていた。
「ホストに入れ込むとはホント馬鹿なお前らしいな」
馬鹿のところを強調する。
「ホストじゃないもん、新しい彼よ」
リョウは吹き出した。
「璃々子お前、1回死んだ方がいいわ」
リョウは蓮を見上げる。
「こいつ馬鹿だからいくらでも金出すよ。枕なんてしなくても搾り取れるからさ、つかこいつあっちの方はイマイチだから」
「うるさいわらじ!」
気づくと璃々子はリョウに向かって行っていた。
振り回したハンドバックがリョウの頭にヒットする。
「畜生、璃々子お前」
振り上げたリョウの腕を掴んだのは蓮だった。
「僕の大事なお客さまに乱暴するのは止めてもらえませんか?なんだったら店で話しますか?」
リョウと蓮が近くで並ぶとまるで子どもと大人だった。
リョウは腕を捻るように振りほどくと仕立ての良さそうなスーツを正す。
もう1度確認するように蓮を頭の先からつま先まで睨む。
鼻からフンと息を吐いた。