ストロベリームーン
入り口近くの女の子たちが一斉に世那を見る。
みな若くて普通の女の子に見えた。
とりあえず世那は奥に進み、それからコーラを頼んだ。
カウンターの中にいる女の子はベリーショートヘアーで片耳にいくつもピアスをしたボーイッシュな子だった。
小春にどことなく似てなくもない。
壁に寄りかかってコーラをストローで啜る。
自然な素ぶりを見せながらも、内心バクバクだった。
アサイラムコーヒーより狭い店内にいるのはみんな女の子。
中には男と見間違うような人もいたが胸に膨らみがあったり、つるりとした顎から女であることが分かる。
もっと別世界かと思ったら意外と普通だった。
でもいつもと違うところが1つだけあった。
普段だったら男たちが投げてよこすような視線を女の子たちがするのだ。
世那を物色する目を。
どうかわたしには話しかけないでね、わたしは違うから、ちょっと覗きに来ただけなんだから、だからお願いだから話しかけて来ないでね。
「ここ来るの初めて?」
話しかけられた。
「あ、あの違うんです。わたしちょっと事情があって」
手を振りながらしどろもどろになる。
話しかけてきたのは3人組の女の子たちだった。
世那より少し年上だろうか、どこにでもいそうな女の子たちだ。
「もしかしてまだ分かんない系?」
真ん中の少し派手めな子が言った。
「え?」
「まだ女の子と付き合ったことないんでしょ。でも女の子を好きになってしまったとか、それか好きかもしんない、どうしようわたしレズかも?で、それが確かめたくて来てみたって感じ?」
そうじゃない。
とははっきりと言えなかった。
「そう言う子けっこういるよ。わたしも最初そうだったもん」
右のぽっちゃり系の子がにこりと笑う。
真ん中の子が左の髪の長い子を指差した。