ストロベリームーン
「こんな感じで仕上がるから、ね、だったらいいでしょ」
自分の奇妙な体がこんな芸術的に仕上がるとはとても思えないが、もし本当にそうなるんだったらやってみたい気もする。
「うん、でも」
それでもまだ清水の舞台から飛び降りれないでいた。
今日履いてきた苺のパンツがひっかかる。
「世那が1人で脱ぐのが恥ずかしかったら、わたしも脱ぐから」
世那は瞬きをするのも忘れて小春を見上げた。
綺麗に掃除されている部屋でも窓から差し込む光の中を埃がたゆたうように浮遊している。
なぜこんなことになってしまったのだろう。
世那はしゃがんで服を脱ぐと、スポーツブラのような色気もへったくれもないブラと苺のパンツを即座に丸めてバックに突っ込む。
2本の腕では隠しきれない大事なところをどうにか庇う。
こういう時、髪が長ければ胸でも隠すのを手伝ってくれようものの、世那の髪は肩にも触れない長さでなんの役にも立たない。
下半身を押さえた手の平に硬い縮れた毛が当たる。
この時ばかりはいつもは滑稽でしかない毛が頼もしく感じられる。
しゃがんだまま恐る恐る小春を振り返る。
小春は立ち方のお手本のようなまっすぐな姿勢で窓の方を向いていた。
綺麗だった。
横向きでも分かるくびれたウエストに日本人には珍しい上を向いたヒップ。
大きくはないが形の良いバストに引き締まったお腹。
そしてその下の。
世那は目を逸らした。
妄想でも小春のお尻や胸は思い描いたが、肝心の大事な部分はいつも霞がかかったみたいにあやふやにしていた。
小春の体は大人の女の体だが性的な感じがしなかった。
余分な脂肪がついていないせいだろうか。
それに比べ同じく大した脂肪は胸を含めどこにもついてないが子ども体型から脱していない自分の体。
小春がモデルになった方が絶対にいい。
小春が正面を向いて世那は俯く。