ストロベリームーン
「さ、じゃあ始めよっか」
小春はそのままでいいよと、団子のように丸くなった世那を撮り続ける。
奇妙な光景だ。
裸の女が2人部屋で写真を撮っている。
撮られる方だけならまだしも撮ってる方も裸なのだ。
やはりこれは相当変なんじゃないだろうか。
「ねぇ、いつもこういうことしてんの?」
「こういうことって?」
「裸になって写真撮ったりとか」
小春の体が揺れた。
笑っているのだ。
椅子の足に立てかけてある写真を見る。
この時も小春は裸になったのだろうか。
「どうして?気になる?」
「別にただなんとなく、そうなのかなって」
「裸にはよくなる。1人でいる時とか、休みの日は1日家で裸で過ごすこともある」
あ、なんかそういうの聞いたことがある。
確か裸族とか言って外では普通に服を着ているが家の中では裸で過ごす人たちのことだ。
「ねえ、後ろ向いて。背中取りたいから」
団子のようにしゃがんだままでいいものかと思っていたので素直に後ろを向く。
横座りになって、隠す必要のなくなった手をだらりと垂らした。
窓から差し込む光が背中に当たって温かい。
心地よくてまどろみそうになる。
壁には不規則にはめ込まれた小さな青いタイル。
小春が1つ1つタイルをはめている姿を想像する。
アンティークなサイドテーブルの上には小さなサボテンの鉢が1つ。
マガジンラックにはインテリア雑誌に写真の雑誌、それに少年誌。
少年漫画なんて読むんだ、と笑いそうになった時、視線を感じてどきりとする。
マガジンラックの横に細長い鏡が立てかけてあった。
そこに裸の自分が映っている。
貧相な胸に空気に触れた二つの乳首がツンと立っている。
視線の犯人が自分だと分かりほっとするのも束の間、緊張が走る。
鏡に映っているのは世那だけではなかった。