ストロベリームーン
信じる?それとも…
メニューを覗き込む蓮の横顔を璃々子はうっとりと見つめる。
「蓮くんなんでも好きなのオーダーしていいよ」
「ホント?じゃあこの究極盛とか頼んじゃっていい?」
蓮はメニューを璃々子の方に向けた。
金色の皿に乗った赤い肉の写真を指差している。
璃々子は写真の下の5680円という赤い値段をちらりと見て、視線を蓮の指先に移す。
男らしい骨ばった太い指。
ついさっきこの指が璃々子の軀を這い回ったのだ。
昨夜も散々ベッドの上で蓮に翻弄されたのにもかかわらず、出かける直前に蓮はまた璃々子を求めてきた。
それも玄関先で。
先に食べてからまた家に戻って来ればいいと璃々子が言うと、食べる前だからいいんだよ、と蓮は璃々子のスカートをたくし上げる。
愛撫もそこそこに後ろから乱暴に押し入ってこられ、璃々子はあられもなく声を上げた。
丁寧に優しく抱かれるのも好きだが、こんな風に欲望だけを突き立てられるのも嫌いじゃない。
蓮もそれを知っているのか、耳元で普段は口にしない卑猥なことを囁いてくる。
それを思い出して、ドクンと熱い液が璃々子から溢れた。
「ねぇ、これ頼んでもいい?」
「うん、いい」
ため息の混じった声が出た。
「わーやったぁ」
さっきの雄々しかった蓮は小学生の男の子みたいに喜ぶ。
そのギャップも萌える。
「蓮くんって焼肉好きだね」
蓮との食事は3回に2回が焼肉だった。
璃々子の家から歩いて来れるこの店に入ったのは初めてで、狭くて薄暗い感じの店構えだが中に入ると予想に反して清潔でなかなか良い店だった。
「僕肉好きなんだ。でも自分じゃこんないい肉ぜったい食べれないから。機材代とかスタジオ代とかお金かかって」
璃々子は席の後ろの壁に立てかけてある黒いギターケースを振り返る。