ストロベリームーン
孝哉のレモン&ミント水をおかわりした璃々子は胃も心もすっきりしたように帰って行った。
最後は笑顔まで見せた。
馬鹿は死んでも治らない。
そんな言葉が世那の頭に浮かんだ。
「世那ちゃん今日は遅くまで悪いね。あとは僕がするからもう帰っていいよ」
世那は通りに出してあるブラックボードを店内に運び込む。
「大丈夫です。明日あった講義が休校になって、明日1日暇になっちゃったんで」
「そう、じゃカフェドベルジク飲んでみる?作ってあげるよ、いつも飲みたそうにしてるから」
孝哉は冷蔵庫から卵を取り出した。
「大丈夫です。わたしあんまり甘いの好きじゃないんで。普通のコーヒーでいいです。ブラックで」
本当は甘いものは大好きだった。
特にアイスが好きでアイスはハーゲンダッツが世界一だと思っている。
いろんなフレーバーがあってそれらもいいがやはり王道はバニラだ。
孝哉は2人分のコーヒーを煎れると世那をカウンターに座らせ、自分は中に立ったままタバコに火をつけた。
煎れたてのコーヒーは世那には熱すぎる。
「熱いのダメだっけ?」
世那はうなずく。
猫舌だった。
コーヒーに息を吹きかけ吹きかけちびちび啜る。
「世那ちゃんって隼人と付き合ってんの?」
アイツ。
世那はムッとしたが顔には出さなかった。
「隼人くんが言ってました?」
孝哉曰く隼人は店の常連客にも宣言して回っているのだと言う。
「相当嬉しいんだろうねぇ」
孝哉は目を細めた。
小春もそのことを聞いただろうか。
急にコーヒーが苦くなった。
「すみません、店には迷惑かけないようにしますから」
「いや、別にそんなことはどうでもいいんだよ、それより」