ストロベリームーン
「孝哉さんから聞いたの?」
『いや、常連さんの誰かからだけど。
恋人殺されるなんてきっついよなぁ。
俺、世那ちゃんがそんなことになったら、絶対に犯人ぶっ殺してやる』
世那は自分から電話をかけておいて、早々に電話を切りたくなった。
うまく説明できないが、そうじゃないのだ。
別に隼人に慰めてもらおうと思った訳じゃないが、もっと他に言葉があるだろう。
隼人は一応付き合っているのに、電話も毎日のようにするのに、付き合い始めた日数の割にはセックスも何度もしているのに、なぜか世那に寄り添った感じがしない。
付き合いがまだ浅いせいだろうかとも思うが、ずっとこのままのような気もする。
それとも男と女なんてこんなものだろうか?
前に付き合っていた彼氏がどうだったか思い出せない。
遠くに駅の明かりが見えた。
「あ、もう駅に着いたから」
世那は電話を切った。
自分が話したかったのは隼人じゃなかったのだと、電話を切った後によく分かった。