ストロベリームーン


「世那ちゃんもやった方がいいんじゃない?必要でしょ」

 なんでそれが分かるんだ璃々子。

 他はダメダメだが仕事においてはそこはやっぱりプロなのか。

「隼人くんも世那ちゃんにやって欲しいでしょ。世那ちゃんだったら安くしておいてあげる。なんだったらビール5本分でいいよ」 

 璃々子はアルコールが入っているせいでいつもに増してテンションが高い。

「この2人ねぇ、付き合ってるんですよ」

 やめろ璃々子。

「小春さんは知ってますよ。俺言ったもん」

 隼人も黙れ。

「なんだぁ、そっかぁ、でもでもでも、なんか青春って感じだよね。ねぇねぇどっちから告白したの?」

「そんなの俺に決まってるじゃないですか」

「で、世那ちゃんはOK したんだ」

「いやOK っていうか、なぁ」

「えーなになに、もしかして成り行きでってことー?やっだ、若っかい」

 これ以上やめて。

 世那は心の中で叫んだ。

 小春は穏やかな笑みを浮かべ璃々子と隼人の話を聞いている。

 その顔からは小春が何を思っているのか全く分からなかった。

 笑っているが血の通っていない仮面のように冷たかった。

 反対に世那の方は体が脈打ち呼吸が浅くなる。

「それより璃々子さんの方はどうなんすか、あの若っかい彼氏さん」

「えー、わたし?」

 話題が璃々子の方に流れて世那はほっとする。

 背中にかいた汗が冷たい。

 璃々子は一通り小春に蓮の話をした。

 現金を入れた封筒がなくなったことも言いにくそうに話し、でもわたしは絶対蓮くんじゃないと思う、と言い訳がましく何度も繰り返した。

 璃々子が話し終わると誰ともなく、みな小春がなんて言うか注目する。

「ミュージシャンかぁ、あいつらろくでもない奴が多いからなぁ」

 小春はミュージシャンの知り合いでもいるのか誰かを思い出しているような風にコーヒーを啜った。



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