ストロベリームーン
猫の糞害というが身近な人で猫の糞で困ってるなどという話、聞いたことない。
ああいう人に限って家ではペットショップで買った血統書付きの犬を可愛がってたりする。
野良猫に餌をあげる人に、それを戒める人。
猫を拾う人に捨てる人。
人のものを盗む人に、与える人。
騙す人に騙される人。
疑う人に信じる人。
愛す人に愛される人。
自分はいつもどちらの立場だっただろうか、そして今は。
隼人から好きになられ、小春からは逃げ、孝哉には背を向ける。
自分の思った通りに生きるのではなく、自分のことしか考えていないだけではないのか。
でもそれのどこがいけない。
誰もが英雄のように強いわけではないのだ。
殆どがか弱いき子羊で自分の人生を生きるのにやっとなのだ。
人に迷惑をかけなければそれでいいではないか。
猫の頭を撫でようと手を伸ばすと、猫はどこかへ行ってしまった。
グーグルマップを立ち上げて自分のいる場所を確認していると、ふらりと公園に1人の男がやってきた。
世那が座っている反対側のベンチに腰かける。
蓮だった。
蓮は世那のことは覚えていないようで、一瞬世那と目が合ったがそのまま素通りする。
ポケットからタバコを取り出し吸うのかと思ったら手に持ったタバコをじっと見つめ、何を思ったのかタバコの箱をゴミ箱に投げ入れた。
次にスマホを取り出すと耳元に当てるが、すぐに画面をいじり出す。
電話しようと思った相手が出なかったのだろう。
世那は蓮がスマホに夢中になっているのをいいことに蓮をガン見した。
こいつ璃々子さんから盗んだ50万はどうしたんだろう。
どうにかしてこいつが盗んだという証拠を掴めないだろうか。
世那の視線を感じたのか蓮が顔をあげた。
思いっきり世那と目がかち合う。