ストロベリームーン


 小春はそんなにも怒っているのだろうか。

 ドラッククイーンの言葉を借りれば小春はそんなに深く傷ついているのだろうか。

 傷つく?何に?わたしが隼人と付き合ったから?

 これ以上は世那にはもう限界だ。

 会いたい、そう伝えて相手から無視される。

 プライドを捨て、自分の心を守るものを全て捨てて、裸で立ち向かって行く勇気は世那にはなかった。



 家に帰って何をするでもなくぼんやりしているとスマホがコロンとなった。

 ベッドに放り投げていたスマホにダイブする。

「なんだ隼人か」

 そのままゴロンとなる。

 バイトを上がった隼人がいつものように世那に連絡してきたのだ。

 明日は土曜日だった。

 隼人は世那の家に来たそうだったが、どうにか近所のファミレスにしてもらう。

 世那がファミレスに着くと隼人はもう来ていて、ホールスタッフの女の子としゃべっている。

 世那を見つけると大きく手を振った。

 隼人はハンバーグとグリルチキンとエビフライのコンボに大盛りライス、そしてそれとは別にカレーも注文した。

 世那は食欲がなかったので、隼人がもう1品頼むかどうか迷っていた冷やし中華を頼んでつまむことにした。

 残った分は隼人が食べる。

「今日のあのすごい客ってさぁ」

 すぐに誰のことを言っているのか分かった。

 すでに隼人はカレーを食べ終わり、コンボも半分まで食べ進んでいた。

 それに比べて世那の冷やし中華は全然減っていない。

「ホモだよね」

 箸ですくい上げた麺が滑って落ちた。

 汁が世那の顔に飛ぶ。

 今どきホモなんて言葉死語だと思っていたが、ここに使う奴がいた。

 なぜかイラッとする。

「俺、ホモは嫌だなぁ。レズはいいけど」

 イラッに油が注がれる。

「なんでレズはいいけどホモは嫌なの?」

 どうにか冷静さを装う。





 
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