ストロベリームーン
「ねぇ、こんなとこでなにしてんの?」
蓮はうっすらと目を開けた。
初めは世那が誰だか分からないようだったが蓮は、あ、と小さく言って起き上がった。
「この前の」
「こんなとこで超怪しいんだけど」
言ってから、本当に怪しい奴だったと思った。
蓮は目の前のコンビニを指差す。
「バイトの面接」
「ふーん、働く気はあるんだね」
「たぶん働かないけど、他に正社員の話もあるから」
正社員の話があるのにコンビニバイトの面接を受けるなんて訳が分からない奴だ。
「あのさ」
世那は一呼吸おく。
「璃々子さんに50万返しなよ。それで璃々子さんにはもう近づかないで。あんたには他に若い彼女ちゃんといるでしょ。璃々子さんはあんたに夢中だけど、50万返さないんだったらわたしが警察に行くからね」
世那は一気にそう言うと、1歩後ずさった。
「なんで璃々子を知ってんの?」
そうだ。
この前は知らないふりをしたのだった。
「1度璃々子さんとアサイラムコーヒーに来たでしょ。わたしそこでバイトしてんの。あ、でももう辞めるけど」
蓮はしばらく考えているようだったが、「ああ」と気だるさそうに頷いた。
「なんでバイト辞めんの?」
50万も若い彼女のこともスルーか。
「わたしのことはどうでもいいでしょ。それより璃々子さんにお金返しなよ」
「50万ってなに?知らないんだけど。それに若い彼女とかいないし」
世那はムムッと口をつぐんだ。
そうだ、そんなに簡単に白状するはずもないか。
「本当のこと言うとすっきりするよ」
世那は隼人に本当のことを言ってすっきりはした。
代わりに隼人の真実も知ることになり、多少モヤモヤ感が残らないでもないが。
「ふーん、すっきりして、それでなにか変わんの?」